2008.09.03|社長ブログ
最近撮った写真で目が赤く写っているものがあり、昔、カメラの開発者だったころの記憶を思い起こしてくれた。
文字どおり赤目写真というのだが、写真に写った大切な人の目が真っ赤っかだったら、甚だショックを感じるものだ。
この赤目、欧米では“悪魔の目“といって、非常に嫌われる。
映画ターミネーターのクライマックスでサイボー グの目が赤く光っていたが、赤く光る目は、恐ろしさや不気味さを象徴するものなのだ。
では一体何故、目が赤く写るのだろうか。
暗いところで写真を撮る場合、フラッシュを光らせる。
暗いところでは、猫に限らず人間も瞳孔が開いている。
暗闇でフラッシュを光らせると、開いた目の瞳孔を通って、たくさんの光が網膜に達する。
その光は網膜で反射し、再び、大きく開いた瞳孔から飛び出す。
それがメラのレンズで捕らえられフィルムに像を結ぶ。
網膜には血管が集まっており、それが写るから赤いのである。
この赤目が問題になりだしたのは、百数十年を越える写真の歴史の中では、
この2~30数年以内のことと思う。
その背景には、精密加工技術と半導体技術の発展に深く関わっている。
昔のカメラは、赤目になりにくい。なぜなら、昔のカメラは大きいからだ。
カメラを正面から見ると、大抵、真ん中にレンズがあって、向かって右上にフラッシュがある。でっかいカメラはこのレンズとフラッシュの隙間が広い。
隙間が広ければ、フラッシュの光は目の真正面でなく、少しだけ斜め方向から瞳孔に入る。
斜めに入った光の反射は、角度がついているから、簡単には再びレンズに戻ってこない。
カメラが技術の進歩で小さくなればなるほど、このレンズとフラッシュは接近し、その結果として、目が赤くなったのである。
赤目を防ぐには、レンズとフラッシュを離すしかない。
技術者は、カメラを小さくしながらも、フラッシュとレンズ間を広げる工夫をし、
フラッシュが飛び出るカメラを知っている人は、ある程度の年配である。
世界中から赤目写真を取り寄せたり、大学病院の眼科で話を聞いたりもした。
自分の目をモデルにして、光を当て続けたこともあった。
血液のヘモグロビンの色分布も調べたし、目の応答速度も測定した。
今では、赤目防止(抑制)モードというのがあって、このモードでシャッター釦を押すと、最初にフラッシュがチカチカチカと光ってからシャッターが切れるものが多い。
これは、フラッシュをドカーンと光らせる前に最初のチカチカの眩しさで、瞳孔をある程度閉じさせておくことで、赤目を抑制しようとしているのだ。
さらには、パソコンでの画像処理がポピュラーになった今、赤目写真を自動修正するソフトなんていうのも登場した。
1枚の写真が、開発時代の懐かしい戦いの記憶とともに、当時の情熱を呼び起こしてくれた。
ちなみに、金目写真というものがある。
目の網膜の一点には神経が集中している盲点がある。
この盲点での反射光を捕らえた時、赤目でなく金目になる。
この金目の発生は非常に珍しく、縁起が悪いどころか、その時には、宝くじでも買ってみると良いかもしれない。
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